2012年5月26日土曜日

BPOの議事概要を読んでみるコーナー 第183回 放送と人権等権利に関する委員会

第183回 放送と人権等権利に関する委員会
http://www.bpo.gr.jp/brc/giji/2012/183.html

1.  審理要請案件:「ストローアート作家からの申立て」~審理入り決定

申立内容

番組は『情報プレゼンター 特ダネ!』。本年1月9日(祝)放送の「ブーム発掘!エピソード・ゼロ② 身近なモノが…知られざる街角の芸術家編」と題した企画で、ストロー、バナナ、海苔、それに石を素材とした4種類の作品と作者による制作の様子などを紹介した。
申立人は、ストローを素材にした作品(ストローアート)の作家。申立書によると、数本のストローで作り小瓶に活けた組作品の椰子を1本ずつに崩し、本来飲み物に挿すためのものではないにもかかわらず、飲み物に挿して喫茶店の客に出し反応を撮影・放送したこと、出演者に4作品の人気投票をさせた上、キャスターが「石以外は芸術ではなく趣味の域だ」とコメントしたことについて、「過剰で誤った演出とキャスターコメントにより、独自の工夫と創作で育ててきたストローアートと私に対する間違ったイメージを視聴者に与え、私の活動と人権を侵害した」と訴えている。

番組のためにせっかく作ったストロー細工を崩したあげく客にストローとして出すとか、街角の芸術家として指名されて作品を作ってきたのに「趣味の域」とか言われたら、確かに腹も立ちましょう。
で、「ストローアート」「椰子」という妙に引っかかる単語で検索してみると……妙にテレビと仲のいいストローアーティストの方(そっちの世界ではかなりメジャーらしい)がいらっしゃってその人が製作している椰子の細工がものすごい。そして幹にあたる部分はストローそのもので、そこに細工で作った葉を差し込んでる形になっているので、葉を抜いて幹の部分を出せばそのままストローとして使用できるのは明らかです。
調べればテレビ番組にキャラクターを作って納めてるプロもいるし、動画探せば世界中でやってるジャンルに向かって「趣味の域」は言われた側にしてみりゃ確かにねーわ。ちゃんと教えてなかったのか、それともわかってて言ったのならさらにタチ悪いわ。

放送後、メールでフジテレビと交渉を続けてきたが、フジ側から提示された謝罪放送の文案に承諾しかねるとし、やり取りを重ねても話が通じないとして4月3日、申立てに至った。視聴者への謝罪とイメージの回復、及び申立人への謝罪などを求めている。
これに対して、フジテレビは、「申立てに関する経緯および見解」の中で、「申立人に不快な思いをさせたことは真摯に反省し申し訳ないと考えている。演出方法を事前に明確に伝えなかったという落ち度も認め、放送でのお詫び案を5回示して誠意をもって対応してきたつもりだが、理解を得られていない」、「現在に至るまで十分なコミュニケーションは取れていないが、実質的な話し合いに向けてメールでやり取りしている最中との認識でおり、引き続き誠心誠意話し合いを続けたいと考えている」としている。

お詫びのしかたに不満があるってのはおそらく「趣味の域」というコメントを発したキャスター自身が飲まない要求なんだろうなぁ。

委員会では、双方から提出された書面及び資料をもとに審議した結果、本件申立ては審理の対象となる苦情に該当し、かつ双方の話し合いは相容れない状況になっていると判断でき、運営規則第5条の苦情の取り扱い基準を満たしているとして審理に入ることを決定した。

「放送と人権等権利に関する委員会」における苦情の取り扱い基準については運営規則第5条を参照。重要なのは

(4) 審理の対象となる苦情は、放送された番組に関して、苦情申立人と放送事業者との間の話し合いが相容れない状況になっているもので、原則として、放送のあった日から3か月以内に放送事業者に対し申立てられ、かつ、1年以内に委員会に申立てられたものとする。

 まずは放送局と話し合ってからその話し合いが相容れない状況になったときにBPOが間に入りますよ、ということ。
 いきなりBPOに申し立ててもダメ(いわゆる「意見」として目立った場合[2.]と長期的な放送行為による現行犯[3.]が例外)っぽい。そしてBPOには1年以内だけど放送局には3ヶ月以内に申し立てて話し合いを設けないといけない(申し立てただけじゃたぶん話し合いとはいえないとか言いそう)
 意外とこの委員会、利用する障壁高そう。

 そして……

(5) 裁判で係争中の事案および委員会に対する申立てにおいて放送事業者に対し損害賠償を請求する事案は取り扱わない。 また、苦情申立人、放送事業者のいずれかが司法の場に解決を委ねた場合は、その段階で審理を中止する。

 これはBPOがただの任意団体(司法機関どころか政府機関でも官庁でもないよ)であって、この団体の決めたことに従う法的な強制力は一切ない(さすがに放送局は履行すると思う)ので、裁判の判決が出たらなすすべもないこと。何より損害賠償が絡む決定をするようだと示談交渉であり、ただの任意団体で示談交渉なんてしたら非弁活動で違法ですよって話(要他者見解)
 もともとBPOにはその立場を保証する法律なんてないし、この辺がアメリカなんかできちんと法律で権限を与えられたFCC(連邦通信委員会)が猥褻な番組を流したテレビ局に罰金を課することができるのとは決定的に違う点(たぶんこっちはこの手の説明では何度か言ったw)

 民放連のエラい人はこんなことを言ってますけど。

「放送事業者は、いわば、BPOの判断というのは最高裁の判断みたいなもので、ここが判断を出したら、いろいろ言いたいことはあっても、すべて守っていく、忠実に守っていく、そういう約束の合意書にNHK及び民放各社がサインをしてBPOに提出しております」

広瀬道貞民放連会長
2007年6月20日衆議院決算行政監視委員会にて

2. 放送倫理上の問題に関する判断

前回に引き続いて、放送倫理上の問題に関する判断のグラデーションについて意見を交わした。
委員会は当初は、「放送倫理上問題あり」で統一されていたが、近年、個別事案ごとの性格の違いを踏まえた判断の微妙な差異を示すため、「重大な放送倫理違反」、「放送倫理違反」、「放送倫理上問題あり」というキメの細かなグラデーションを設けてきた経緯がある。しかし、昨年行われた放送局への聞き取り調査では、「放送倫理違反」と「放送倫理上問題あり」の違いが分かりにくい等の声が出された。こうした指摘を受け、申立人と放送局の双方にとってより分かりやすく理解しやすい決定とするため、本年2月以降、判断のグラデーションをよりシンプルにする方向で検討を重ねてきた。

 現在は3段階と「問題なし」しかなかったこの委員会の判断のを何段階かに分けようと言うお話。
 事案の性格の違いを踏まえるなら定性的なのかと思いきや、なんか定量的に決まってしまった気がする。

この日の委員会では、グラデーションの見直し案について事務局から説明し、これを受けて詰めの議論を行った。この結果、従前の決定等をふまえつつ、「放送倫理違反」と「放送倫理上問題あり」という判断を一本化することで最終的に意見がまとまった。表現については、放送倫理の内容が法規範とは異なり必ずしも確定的なものではないこと、放送倫理については放送局が定めた自主的倫理規範に反しているかどうかを判断の拠り所としていること、さらに放送倫理上の問題点を違反事例に限定することなくより広く具体的に捉えられるとの観点から、「違反」ではなく「問題あり」に統一することとした。これに伴い、わかりやすさという観点から、「重大な放送倫理違反」も「放送倫理上重大な問題あり」に修正されることとなった。
委員会決定における判断は下表の通りとなり、以後の事案から適用される。

「勧告」 人権侵害
放送倫理上重大な問題あり

 「見解」

放送倫理上問題あり
問題あり
問題なし

なお、決定における判断内容をより簡単に把握してもらうため、決定文の表題に「勧告」もしくは「見解」という表示を付け加えることになった。「勧告」と「見解」の区別についてはさらに細かな区別も検討したが、わかりやすさという観点から従前のとおりとした。

 東京都もそうなんだけど基本的には定量的には「18歳未満の販売を禁ずる」か否かの2択であって、定性的な部分を猥褻なり暴力なり違法行為(一部違法じゃないけど)なりで条文化してるわけで、この分類だと「人権」と「放送倫理」は定性的に分類されてる(前回の議事を見るとそれは合意していたようだ)ように見えて、「問題あり」には人権上と放送倫理上の両方に使えるように設定している点がやや気になる。たぶん使っていくうちに混乱を招きそうな気がする。

 あとここからは妄想だけど、ここでのグラデーション案を作成したり、毎月の意見を受け付けたり、その中からWebで掲載する意見を抽出したりする役割を担っている事務局の存在が任意団体ゆえ東京都以上に不透明なのがさらに気にかかる。人数すらわからない。受け付けた意見の件数を考えるとそんなに人数はいないんじゃないかと思うんだけど。
 ただ理事とか委員会の委員を選出する評議員の面子を見る限り官僚とかの天下り先にはなってなさげ、放送局から予算もらって(2010年度はほぼ全額放送局から約4億600万円)政府とは関係ないと抗弁するだけあってその辺は徹底してそう(要調査)


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