2009年3月3日火曜日

今月のBPO(放送倫理検証委員会)の不定期コーナー

「放送倫理検証委員会」の議事録から、以前ニュースでも話題になった番組に対する委員会の結論が出ていたのでご紹介。

第20回 放送倫理検証委員会 2008(平成20) 年12 月12 日(金) 午後5時~8時
http://www.bpo.gr.jp/kensyo/giji/2008/020.html

1. 歴史上の人物の扱いに問題があった深夜のバラエティー番組
 女性アイドルタレントが世界の「偉人」について、学校形式で簡単な紹介をした後に、似顔絵や物真似を披露する深夜の短いバラエティー番組。若いタレントによる軽いタッチの番組とはいえ、偉人としてヒトラーを取り上げたことは一般常識に照らしても問題がある。また、制作会社や当該局側のチェック体制が機能していなかった。
 覚えてますか。この件ですが。

「ヒトラーおじさん」偉人 アイドル不適切発言でテレ東謝罪
http://sankei.jp.msn.com/entertainments/media/081208/med0812082130002-n1.htm
 テレビ東京が4日放送したバラエティー番組「よろセン!」
 放送されたのは、同番組の「世界偉人DEN!」のコーナー。アイドルグループ「℃-ute」のメンバーがヒトラーを「ヒトラーおじさん」と呼び、その演説には癒しの効果があったなどと紹介。放送後、ネット上の掲示板などで批判の声が上がっていた。

 見たんだけどたったの2分。
結果: しかし、ミスを認めて自主的にお詫び放送をしているので、個別には取り上げないことにした。
 委員の主な意見は次の通り
* タレントは台本通りに演じただけということで許されるのか。多額の出演料がタレント会社に流れているのだから、責任の一端があるのではないか。
* タレントが台本を見て「私にはできません」と拒否することは現実的には難しい。
* 相当な人数が番組制作にかかわっているのに、ヒトラーをあのように表現して誰も何も言わないことが怖い。
* この放送は確かに問題であるが、ただし、強引に封じ込めると逆に思想を統制する危険を感じる。
* 思想ではなく無知の問題。思想以前の問題だ。
* 外国から、日本にはタレントはいるがアーティストはいないといわれてしまう。文化の質として低い。
* 外部からの問題指摘ばかりで、局内から「おかしいよ」という声が上がらない。パッケージ番組をそのまま放送する体制に問題がある。
 問題には思ったもののそれ以上のものではないという結果。確かに怒る人は怒るんだろうけど自分なら「癒し効果の出典はどこ?」の方が気になりました。

第21回 放送倫理検証委員会 2009(平成21)年 1月 9日(金)午後5時~8時15分
http://www.bpo.gr.jp/kensyo/giji/2008/021.html

1. 建設中のマンションをPR的に扱ったバラエティー番組
「出没!アド街ック天国~浜田山」ですね。

「アド街」の内容に問題があると審理要請
http://www.nikkansports.com/entertainment/news/f-et-tp0-20081216-440808.html
 番組内は、グラウンド跡地に建設中のマンション「パークシティ浜田山」を1位にランク。価格を紹介するなど、スポンサーでもないのに宣伝要素が大きく、公共性を損なうというのが理由だ。2度にわたり質問や訂正などを要請したが、まともに対応せず、放送倫理に欠けるとしている。
結果: 討議の結果、当該番組自体に放送倫理上の問題があるとまではいえず、委員会としては取り上げないことにした。
 この番組のコンセプトは、ある街で見つけたモノの良い面だけを捉えてランキング形式で紹介することなので、結果としてPR的な手法になることはやむを得ない。また、マンション建設の是非がテーマの番組ではないし、一方の主張だけを取り上げたともいえない。しかし、1位としたそのマンションを取材するときに係争中であることに気がつかなかった、というのは明らかに当該局の取材不足である。身近な街の紹介をコンセプトとする同種の番組は何本か放送されているが、十分なリサーチと、広告宣伝とは一線を画した毅然とした制作姿勢が求められる。
 委員の主な意見は次の通り
# 今までのこの番組の流れから見て今回が特別とは思わない。広告を模したつくりがコンセプトなので、PR的な番組にならざるを得ない。
# 六本木など再開発の流れの一環として、街全体の大きな変化としての取り上げ方ではないか。たださまざまな配慮が足りなかった。
# 番組制作過程においてPR的な要素を、疑おうと思えばいくらでも疑えなくはない。そのような番組を放置しておいていいのだろうか。
# 放送法とか番組基準で考えていくと、広告と番組の境界線を壊していて、ある意味ではテレショップ番組より質が悪い。この番組だけをあげつらうんじゃなくて、全体的にチェックしていかなければいけない。
# 報酬が伴われて番組にしたとすれば問題だが、番組制作者が本当に価値がある情報だと判断して紹介するのであれば問題はない。放送の中で商品を紹介することに対して、何がいえるかはかなり難しい。
# 例えば、番組で書籍をストレートに紹介するとPRになるが、これは私にとっては役に立った書籍ですということと、これはこの地域にとって活性化にとても役に立つ再開発ですということ、PRと番組の境目がどこにあるのか難しい問題だ。
# この種の番組は他にもたくさんある。店に入っていってコマーシャルベースで商品を紹介したりする。コンセプトがゆるくなっている。
# 番組を通して見て、マンション建設を1位にしたことが悪いかというとそうともいえない。放送倫理の問題として何かがいえるのかというと難しいと思う。ただ、係争中のものを番組の中で取り上げて積極的に評価をして良いのかは疑問だ。
# 視聴者サービスなのか広告まがいなのか、その境が難しい。制作者のセンスが重要だ。宣伝くささが立ちすぎると、番組の魅力がなくなるから必然的に視聴者が離れる。
# このマンションを1位に持っていったのは作為的だ。つまり、1位以外はほとんどが食べ物店やせいぜい花屋くらい、店ばかりを紹介しておいて突如このマンションが1位はあまりにも不自然だ。
# 番組を作るに当たって係争中ということを知らなかったというのはおかしな話だ。現地の人はみんな知っているはず。当該局は1週間の調査をしたとあるが、本当に知らなかったならば取材・調査不足だ。
# このマンションを紹介するなら、値段や間取りと並んで係争中であることも必要情報として放送すべきではないか。
# あの番組のコンセプトは紹介するものを全て好意的に捉えているから、マイナス情報は出せない。
# 街作りをどう見るかの問題だ。再開発をして街を作っていくのがいいという人もいれば、今までの環境が変わるのがイヤだという街作りもあって、どちらがいいとは言い難い。
 こちらは議題としては完全に一蹴された形。ただ問題意識だけはあるようでいつになく多くの意見が出ています。でもこれ視聴者のレベルとあまり変わってない気が。

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