2012年8月16日木曜日

第626回東京都青少年健全育成審議会資料を読む

「資料を読む」ラベル記事を初めて読む方へ
この資料で出てくる「意見」というのは審議会の委員の意見ではなく審議会の会議資料として渡されている「会議資料」にすでに書かれているものです。
これらは審議会の開催前に前もって開かれる自主規制団体のメンバーによる読み合わせによって出席者から出されます。
詳しい日時や参加者については、「「東京都青少年の健全な育成に関する条例」に係る事務施行経過」という資料の多くは一番下の日程で書かれています。

資料リンク

資料1 諮問図書類及び指定基準該当箇所
資料2 諮問図書類:自主規制団体からの意見聴取
資料4 過去1年間の指定回数一覧
資料5 条例に係る事務施行経過
資料11 都民からの申出一覧

〔出席者〕
(社)日本雑誌協会
(社)日本書籍出版協会
(社)日本出版取次協会
首都圏新聞即売懇談会
(社)日本フランチャイズチェーン協会
出版倫理懇話会

ジュネットコミックス132 ピアスシリーズ314 愛玩奴隷クライマーズハイ!

2012-06-30_2101
  • BL(ボーイズラブ)。修整も甘く、性描写も多い。指定やむなし。
  • BLが青少年に対し刺激が強いか判断できないが、修整が少なく、消せていない。性描写も多い。指定該当
  • 蛍火のような消しはあっても性器が見え、男性同士の性交場面が具体的に描かれている。指定やむなし。
  • 白丸を散らし、ある程度のブラインド効果があるとはいえ、不十分で性器等の描写は露骨で卑わい。指定該当
  • 消しに工夫はあるものの性的行為を執拗に描写しており、卑わい感がある。指定やむなし。
  • 男性器の修整に問題あり。形が分かる。卑わい感は人により受取り方が異なるが、性行為は露骨。指定該当
  • パロディ的な内容で卑わい感はそれ程ないが、性器部分の消し方がおかしく、目につく。指定やむなし。
  • BLにありがちな「クスッ」とする話。消しの甘さでは刺激されないが、肛内性交等は多少リアル。指定該当
  • 修整が不足しており卑わいな感じを与える可能性が高い。指定やむなし。
  • BLは男性器が露骨。小さい白丸で、修整とは言いがたい。20~30代の女性マニア向けで、判断に迷う。保留
  • 修整は不十分だがBLもので卑わい感はない。保留
  • 絵は雑に感じる。白丸で処理されているが大部分は見えている。射精シーン等も描かれている。保留
  • 内容から著しく性的感情を刺激する所まではいかないが、性交箇所の修整が不十分である。保留
  • BLでとても青少年が買うとは思わないが、性器の修整が多少甘い。今回は保留
  • 卑わい感はそれほどない。修整で時々甘いカットがあるが、全体ではギリギリセーフと思える。指定非該当
  • 男性器を丸モザイクで消しており、問題なし。指定非該当

赤-指定やむなし:9  緑-保留:5  青-指定非該当:2
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典型的なBLです。
ええまぁなんでBLだとこんなに甘いコメントが増えるのか理解に苦しみます。これが男と女で肛門性交だけの本だったら無条件で表示図書なのに。
それでも過半数の赤判定。理由は修正の甘さに集中。「蛍火のような」「白丸を散らし」「形がわかる」「丸モザイク」の修正ってどんなものなのやら。

BAMBOO COMICS 被虐のキッス 東城麻美伝説の作品集/上

9784812479223-m
  • 修整はされていると感じるが、性描写は多い。近親相姦を連想させる箇所もある。指定やむなし。
  • 修整されているものの性描写が多く、指定やむなし。
  • 消しのある所、ない所が混在。体液・擬音が多い。性道具の利用が目立ち、サディスティック。指定該当
  • 全編SEXシーンが多く、バイブ等器具の使用もあり、一部の修整が甘い。指定やむなし。
  • 大人向けで卑わい感あり。道具の使用もあり、修整も不十分。指定やむなし。
  • 性的行為シーンはボカシ等一定の配慮はあるものの、一部の修整が不十分で全体に卑わい感も強い。指定該当
  • 性的行為を露骨に表現しており、消しも不十分な箇所がある。器具の使用等もあり、指定該当
  • 男女のストーリーはあるが、性交場面が多過ぎる。女性器のクローズアップのカット等刺激が強い。指定該当
  • 絵柄、内容とも青少年に性的刺激を与えるものと思う。消しも甘いところがあり、指定やむなし
  • ラブストーリーとして成立しており、性描写の必然を感じる。指定すべきとまでは言えない。保留
  • 内容は自然な流れで描かれ、比較的修整もされているが、全体的に性描写が多いのが気になる。保留
  • 高定価で大人を対象とする作り。青少年を対象としていないが卑わいな所があり成人マークは必要。保留
  • 黒塗り、ボカシ、白ヌキなど努力は見られる。単行本化に当たり一定の基準の消しがほしい。保留
  • SEXシーンは多いが性器部分の処理もきちんとされ、この程度であれば問題なし。指定非該当
  • 性的行為の描写は多いが、性交箇所は修整され著しい卑わい感もなく許容範囲。指定非該当
  • 修整が丁寧にされ、卑わいな感じを与えない。人格を否定するような行為にも感じない。指定非該当

赤-指定やむなし:9  緑-保留:4  青-指定非該当:3
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どこかで聞いたことのある名前だなぁ、と思っていたのですが、ネットバトルの世界で一時期有名だった模様。そしてすでに故人。
BL作家ということでしたが、ここでは一般エロの作品集が指定へ。
先月「値段が高い」は意見として通用しないと説明していると事務局は述べていたのに、ここでも出てます。出版の人間ってどういう脳をしているのかと。
青少年を対象にしていないかどうかも同様で、書店に置かれた場合の想像力がなさすぎで泣けてきますね。
ちなみにこれ「東城麻美伝説の作品集/上」とあるわけですが、「/下」はどうするんでしょうね。もう発売中なんですが。

今月の通報申し出

電話による申出(2件)

○ 書店における区分陳列について(1件)
○ 月刊雑誌におけるアニメDVDの広告イラストについて(1件)

月刊雑誌ってアニメ誌だろうなぁ。

番外編 あの雑誌の件について

ここにWebで読める部分があるのですが、画像としてモロな部分があるようには見えないので
http://magazineworld.jp/anan/1819/read/

DVDがメインになりそうですね。とはいえ、都民として通報してもおそらく課長クラスでブロックでしょう。
先月までの流れから、東京都は事務局のみが指定する図書を選ぶ権限があって、都民が通報しても審議会で委員が提案してもムダっぽいことが判明したので。

もっと確実なことを言えば現在出てる「anan」は9月の審議会で審議されることになるので、出版社自身が自主規制でもしない限り普通に店頭に並びますわな。
もちろんそれでは遅すぎるので、緊急時のために即指定できる仕組みもあると聞いたことがあります。4月の資料14 小委員会構成員一覧というのがそれで、これを利用した緊急指定と呼ばれる制度でより機動力のある対応ができるらしいです。しかし、私が見てきた中では発動したところを見たことがないので、まずは一度どんな動きをするか目の当たりにしたいです。それにこの仕組みをもってしても発売日の直後1日は必要になるので店頭に並ぶのを完全阻止することはできません。
まぁこれは出版における最低限の権利とも言えるもので、出版は発売を伴う公開の前にそれに対して行政が手を出すようなことがあってはならない(やれば事実上検閲になる)ことくらいわかっていると思うんですが……
(よく職員が指定対象になりそうな本を税金で購入して回っているのを「税金の無駄」とか言われますが、こういう形でないと手を出してはいけないわけですよ。それも含めて無駄だから廃止しろというのもアリな論点ですが、個人的にはこの制度なくなると自分の立場がなくなるのでw)

ゆえに、条例改正における「萎縮」は行政が出版に与えられる数少ない効果の一つにもなっているとも言えます。
条例を改正する意味を求められる立場からすれば、どうしてもこの「萎縮」に頼るしかないわけですが……ご存じの通りコントロールが非常に難しく、実際コントロールができていないのが現状ですよねー。

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