BLにほんのちょっと同情した……第611回 東京都青少年健全育成審議会資料を読む

第611回　自主規制団体からの意見聴取結果

資料リンク

　※諮問図書
　※諮問図書類指定基準該当箇所
　※諮問図書：自主規制団体からの意見聴取結果

ジュネットＭＯＯＫ　ＤＶＤ　ＪＵＮＥ

発行元：(株)ジュネット　BL(ボーイズラブ)・耽美系総合サイト

　 　

• 男性器の表現、あるいは消し方の基準があるのか。読み手がかなり絞られているので、興味のない人は買わないと思うが、ＤＶＤを見ると指定該当とせざるを得ない。
• 性器及び性的行為の描写が露骨な箇所が数箇所あり、卑わいである。指定やむなし。
• 性描写的にみて、指定やむなし。
• 修整されているものの、全編にわたり性描写があり、指定やむなし。
• ボーイズラブではあるが、消しが甘いところが多く、肛門、陰毛の描き方に問題がある。言葉や音も卑わいであり、指定やむなし。
• 価格が青少年には購入しづらく、表紙も過激さは抑えられているものの、内容は同性愛がネタで性描写が多く、指定やむなし。
• 価格が1,200円台と高い。内容的にも未成年者が買うかどうか疑問。消しの甘さを感じる。判断つきかねる。
• 男同士の性行為が一般的に卑わい感を与えるとは考えられない。価格も高い。ただ、性器の修整は不十分な所もある。判断を留保する。
• 青少年の性的感情を刺激し、性に関する健全な判断能力の形成を妨げる。ＤＶＤは消しが不十分。しかし、ビニール袋に封入され、販売上抑制効果はあると思われ、保留
• 男性器の消しが甘い部分があるが、性的感情を刺激するかというと疑問。価格も高く、シュリンクされ販売とのことで、マニアしか買わない。指定非該当
• ファン向けであり青少年を対象にしておらず、また高価格である。修整もされ、この程度であれば許容範囲。指定非該当
• 普通の男女間の行為の描写として考えれば、それほど過激でない。同性愛指向の人が読者とすると、特殊なジャンルで青少年が手に取るとも思えない。指定非該当
• ボーイズラブ系の読者は９割が女子中高生で、この手の雑誌は普通に読まれていて卑わい感はない。ＤＶＤは判断できないが、本誌、付録は指定非該当
• 性器の消しの甘さや体液の描写は気になる。しかし、ボーイズラブ系コミック誌というマニア性と、高価格で対象客層も大人と考える。指定非該当
• 男性間ＳＥＸシーンは多いが、マニア女性向けであることに鑑みると、そもそも条例には当たらず、指定非該当
• 男性器の描写、数ページの写真、ＤＶＤは問題あるが、シュリンクされた男性のゲイ誌を青少年が購読することは少ない。指定非該当

　

赤－指定やむなし：６　緑－保留：３　青－指定非該当：７
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　先月に続いて今月も女性向け雑誌、それも指定歴１回の「ＤＶＤ　ＪＵＮＥ」が指定されたわけで、個人的にはBL陣営はまだ無自覚にやってんのかという感じだったんですが、それ以上に今回の意見はひどすぎ。

　①　区分陳列への意識の欠如
　……「読み手がかなり絞られているので、興味のない人は買わない」「未成年者が買うかどうか疑問」「ファン向けであり青少年を対象にしておらず」「特殊なジャンルで青少年が手に取るとも思えない」「マニア性と、高価格で対象客層も大人と考える」「マニア女性向けであることに鑑みると」「青少年が購読することは少ない」
　区分陳列ってのは「18歳未満の青少年がそもそも手に取らないように陳列する」ことであって、それを判断するための基準は「この本は青少年が購入してよいものかどうか」であり「青少年が手に取る陳列をしても購入しないから平気」というものではないはず。

　②　シュリンクは一般だってやるさ
　……「ビニール袋に封入され、販売上抑制効果はある」「シュリンクされ販売とのことで、マニアしか買わない」「シュリンクされた男性のゲイ誌を青少年が購読することは少ない」　①と同じ論拠でこれもおかしい。立ち読み防止の一般マンガ単行本も全部販売抑制されているということになる。
　「区分陳列」に含まれているのなら、そもそもこんなところに上がってこないし、シュリンクは書店単位の可能性もある。やはり指定非該当の理由にはならない。

　③　相変わらずの「価格」で非該当
　……「価格が青少年には購入しづらく」「価格が1,200円台と高い」「価格も高い」「また高価格である」「高価格で対象客層も大人と考える」
　単体で理由にされることは少ないが、非該当の理由では常連となっているこれ。このたび議事録でもツッコまれた。
　この人らに子供がいたら、子供にいくら与えてるんだろう。ちなみに定価は1,300円。
　ちなみに高価格なら買うのが大人、というのなら本ごと大人コーナーに行ってくださいね。

　④　ＢＬそのものへの無理解・誤解連発
　「男と男がまぐわってたら性行為として18禁だろ」を主張する私としてはいささか不本意ですが、今回の意見はあまりにも……

　「男同士の性行為が一般的に卑わい感を与えるとは考えられない」→卑猥かどうかはその描写に依拠するので『男同士の性行為は卑猥でない』と括るのは乱暴
　「青少年の性的感情を刺激し、性に関する健全な判断能力の形成を妨げる」→ただの『同性愛＝不健全』の嫌悪表出
　「普通の男女間の行為の描写として考えれば、それほど過激でない。同性愛指向の人が読者とすると、特殊なジャンルで青少年が手に取るとも思えない」→前半だけでいいのに……
　「ボーイズラブ系の読者は９割が女子中高生で、この手の雑誌は普通に読まれていて卑わい感はない」→そんなことは聞いていない
　「ボーイズラブ系コミック誌というマニア性」→まぁエロゲ並みの市場規模はあるといわれてますけどね。
　「マニア女性向けであることに鑑みると、そもそも条例には当たらず」→本当にマニア男性向きには容赦のない方々ですね
　「シュリンクされた男性のゲイ誌を青少年が購読することは少ない」→「少ない」じゃダメなんですが。

　画一的な見解を持てといってるわけじゃなくて、どうせ主観で決まるものだからそれぞれの忌憚のない意見が必要なのはわかるけど、仮にも審査会の判断を助ける役割を担っている以上、今の図書をめぐる現状に対する視点を持たずにただ時代錯誤的かつ主観というか情緒に近い感想を述べて、むしろよっぽど今を生きてる審査会の審査員にツッコまれる現状はどうなんだということで。

　ところで、出版社のサイトではこの雑誌のまぐわいを「ゲイSEX」と呼んでるけど。これゲイコミックじゃなくてBLコミック雑誌だよね。

ＳＰコミックス　新ホントにあったＨな体験②

発行元：新 ホントにあったＨな体験 ２巻

　 　

• 表紙が過激ではなく、ストーリー性はあるものの、性器のアップや陰毛の描写の消しが甘く、卑わい感がある。指定やむなし。
• 完全に中年男性向けエロマンガである。汚らしくて、青少年には見せたくないと感じられ、指定やむなし。
• 性行為や体毛の描き方が露骨であり、性器の処理も不十分である。指定やむなし。
• 全編大部分にわたり基準に該当、ではない。性器の消しも最低限なされている。しかし、性的行為の描き方がリアルかつ露骨で、卑わい感自体をテーマとしており、指定やむなし。
• 奥様もので対象年齢が高いが、性交シーンも多く、卑わい感があり、指定やむなし。
• 全編にわたりＳＥＸシーンが多く、女性器の陰毛の描き方が卑わいである。輪姦や痴漢などアブノーマルなＳＥＸも描かれており、指定やむなし。
• 陰毛の描き方や擬音がすごいと感じる。終始、ＳＥＸ場面ばかりである。指定やむなし。
• 修整されているものの、全編にわたり性描写があり、指定やむなし。
• 表紙は過激ではなく、修整もしっかりされていると感じるものの、性描写が多く、指定やむなし。
• 巻末に行くにつれて絵柄に卑わい感があるが、修整はしている。保留
• 陰毛等を含め描写がリアルだが、若い人向けのタッチではないと思われる。保留
• 卑わい感はあるが許される範囲であり、性器の修整も十分である。指定非該当
• 絵も上手く、ストーリー性もある。アングルなどの作家の工夫もある。指定とすると、性的な動機付けの話は全てだめになってしまう。指定非該当
• 性器等の消しは丁寧に行われている。擬音もあるが、気になるレベルではない。指定非該当
• 体液や擬音が多い上、アナルＳＥＸや器具を使った描写が全般に見られるが、大人向けの官能劇画で青少年は手に取らないし、卑わい感も薄い。指定非該当
• 体液の描写が気になるが、性器の消しも施され、許容範囲である。指定非該当

　

赤－指定やむなし：９　緑－保留：２　青－指定非該当：５
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　こちらは「陰毛」「体液」「性器」「性行為」と相変わらずの通常営業ですが、かなり赤い方。
　内容を見てみるとさっきと同様に「大人向けの官能劇画で青少年は手に取らない」といったものもある一方、「完全に中年男性向けエロマンガである。汚らしくて、青少年には見せたくない」「対象年齢が高いが（略）指定やむなし」などさっきとは全く反対の論理が利いている感じがします（同じ人が言ってるとは限らないわけですが）
　またこれもいつものことですが「輪姦や痴漢などアブノーマルなＳＥＸ」や「アナルＳＥＸや器具を使った描写」が不健全的に述べられていて、じゃあさっきのBL自体どうすんだよと。「○○○穴だからおｋ」とかふざけたこと言わないでくれよと思ったり。

次回の議事録が楽しみなのだ

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　※都民からの申出一覧
　第610回議事録で都民からの通報申出や問い合わせで「こえでおしごと」に疑問の声が上がっていたことから、じゃあ第611回にはどんな通報申出が来ていたのかを見てみると……

１ メールによる申出（９件）
○不健全図書類（図書）について
○不健全図書類（図書）の販売について
○不健全図書類（ＤＶＤ）について
○不健全図書類（ゲームソフト）について
○不健全図書類（ゲームソフト）の販売について
○不健全な図画を描写した抱き枕の販売について（２件）
○18歳以上向け図画入りマウスパッドの販売について
○不法な内容のテレビアニメーションについて
２ 電話による申出（１件）
○不健全図書類（図書）について

　結構な数です。前回の2月（3件）と3月（7件）の合計が10件なので、次回の議事録でこのうちのどれかの正体はわかるのではないかと期待しています。

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